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円堂まゆみの日記

 「私を変えた、あの時、あの人、あの言葉」 その2です。

 75才、男性の話です。
 数年前、現役引退と同時に精神的にも肉体的にも、ガクンと老化して
 しまった。一日何もすることもなく、体が痩せてきて、ちょっと体を動かせば
 すぐに動悸がするし、階段も手すりにつかまってフーフー言う始末。
 完全な「病人」のようになってしまった。

 私を心配した奥さんがある日、赤いベレー帽を買ってきて
 「これをかぶって若返ってちょうだい」と言った。
 最初のうちは恥ずかしかったが、そのうちに慣れて散歩へ出た。
 公園のベンチでタバコを吸っていると、数人の小学生が通りかかり
 その一人が
 「ステキな帽子ですね。おじさんは芸術家ですか?絵描きさんですか?」
 と聞いてきた。
 「さあ、なんだと思うかね?」と聞き返すと、一人の女の子が
 「おじさんは、童話を作る人でしょう?」と言った。

 この女の子の一言が「神様のお告げ」のように思われ、その日の夜から
 童話づくりに熱中するようになった。あっちこっち応募したが、片っ端から
 落選したが、めげずに書き続けた。

 大分県三重町で「町おこし」の一環として創作童話を公募していた。
 乏しい力を振り絞って「浦島太郎、ネス湖へ飛ぶ」という童話を書いて
 応募した。600件の応募の中から10位以内に入り、二次審査で、
 お話の実演をしてもらいたいという連絡が入った。15枚の原稿を正確に
 暗記するのは、至難の業だったが、一心不乱に練習した。

 二次審査で「最優秀賞」をとり、活字になった。その後も落選を重ねているが、
 降圧剤から解放され、40代、50代の時より、精神的にも、肉体的にも
 適度の緊張と喜びのある充実した日を送っている。
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